SISくんのアレ

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ミスチルの新譜『重力と呼吸』を買った、所感

こんばんは。

昨日家を空けているうちに届いてて、昨晩と今朝(そして帰宅中の今も)聴いてました。ミスチルことMr.Childrenの新譜『重力と呼吸』の話です。平日恒例の仕事の話なんてやめよやめよ。私、実はそれなりに長いことミスチルのファンやってます。

いつも以上にバンドの「音」に拘ったらしい今作。結論から書いてしまえば個人的にかなりの当たり盤でした。

 

ミスチルというのは元々桜井さんの卓越したメロディセンスと、唯一無二の癖のある声、どこか抽象的でありつつもリスナーの最大公約数に突き刺さる歌詞が売りのバンドであると私は認識しています。

それに加え、小林武史さんという名プロデューサーの功績もあり、今日のモンスターバンドとしての立ち位置を確立したのでした。

前作のアルバム『REFLECTION』ではその小林さんと少し距離を起き、セルフプロデュースという形でリリースを敢行しました。その作品からは様々なことに挑戦しようという気概は見て取れたのですが、セルフプロデュースにおける、とある残念な点を感じずにはいられませんでした。

それは、バンドの引き出しが少ない、ということです。いかに卓越したメロディを書こうと、いかに良い音で4人の音を全面に押し出しても、その音の振れ幅が少ないと、どこかこじんまりとした、つまらない印象を受けてしまうのです。誤解を恐れずに言えば、「どの曲も同じように聞こえる」ということです(尤も、晩年の小林さんプロデュースにも同様のことは言えますが)。これまではメロディの振れ幅と多彩なサウンドアレンジでそれを補ってきましたが、バンドの4人が剥き出しになると、その脆い点が顕になってしまっている、と感じていました。

 

そんな中リリースされてきた今作。正直に言って、所謂「ミスチルらしい」曲を期待すると肩透かしどころか、凡作、駄作認定さえ有り得るかもしれません。

前作リリース以降行っていた対バンツアーや他アーティストとの交流から刺激を受けたのもあるのでしょうか、これまでに無いタイプのサウンドで曲を聞かせてきます。ベースのゴリゴリのダウンピッキングとか、明らかにQUEENのブライアンメイを意識したギターソロとか、これまで聞いたことのなかったフィルインとか。明確に、バンドとしての音の引き出しをに増やしてレコーディングに臨んでいます。ミックスやマスタリングについても、前作以上にバンドの音を出したいという意思が見えます。セルフプロデュースという形でチャレンジしつつも、どこか「ミスチルらしさ」という枠から外れきれなかった印象を受けた前作とは一転、もはや開き直るくらいやりたいことをやりたいようにやっているアルバム、という印象を受けました。それまでの音楽とは一線を画したアプローチを仕掛けるという点では、「深海」や「HOME」に近いものを感じます。元々桜井さんの歌声に重きを置いた演奏形態で、どちらかといえば控えめなプレイングに徹していたバンドメンバーが、漸くボーカルと対等な音を出すようになったと感じます。桜井さんの声そのものも近年(ここ10年くらい)では一番良い状態でレコーディングされているんじゃないでしょうか。

その反面、歌詞はこれまで以上にシンプルです。桜井さんがリスナーの想像力を信用できなくなっている、という旨の発言は過去にも、リリースに伴うインタビューでもしていますが、今作ではそれがより顕著です。あくまでも歌モノというより、バンドとしての音楽で勝負するという意思表示のように個人的には感じます。かつての桜井節全開の歌詞を欲しているリスナーも相当数居ると思うんですけれどね…。

収録曲数は10曲と、これまでにリリースされたアルバムの中でも相当少ない部類です。でもこの感じでもし15曲なんて入ってたら聴く方も相当な覚悟というか、エネルギーを要すると思います。なので、サラッと聞ける曲数、収録時間におさめたのもある意味、目まぐるしく聴く曲が変わるストリーミング全盛のこの時代に合っているというか、賢明だったと言えるでしょう。

 

長々と書きましたが、買ってよかったです。近年のミスチルのアルバム作品では一番の当たりでした。熟練のバンドが今の時代に向けて放つ、洗練された直球勝負の作風です。ひねくれ者の桜井さんなので、次回作ではまた新たな挑戦を仕掛けて来るでしょう、と勝手に期待しています。

 

それでは、また。

 

バンド感を全面に押し出した曲の数々なので、さぞライブ映えするでしょうが相変わらず人気すぎてチケットが取れません。悲しい。取れた方はぜひ楽しんできてください。